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適応障害

適応障害とは

適応障害は、ある特定の状況や出来事がその人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れるものです。たとえば憂うつな気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりします。また、無断欠席や無謀な運転、ケンカ、物を壊すなどの行動面の症状がみられることもあります。つまり適応障害は、誰でも遭遇し得るストレスによって予想外に精神的ダメージを受け、適応できなくなった状態になることです。

適応障害は、統合失調症、うつ病などの気分障害や不安障害などの診断基準を満たす場合はそれらの診断が優先されることになります。しかし適応障害と診断されても、不安感、恐怖感が増大するなど5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されています。つまり適応障害は、その後の重篤な病気の前段階の可能性もあるといえるのです。

適応障害の原因は

適応障害の主な原因は「ストレス」です。

ある人はストレスに感じることがほかの人はそうでなかったりと、個人のストレスに対する感じ方や耐性も大きな影響を及ぼします。つまり適応障害とは、ある生活の変化や出来事がその人にとって重大で、普段の生活がおくれないほど抑うつ気分、不安や心配が強く、それが明らかに正常の範囲を逸脱している状態といえます。
職場での人間関係や夫婦の不仲、いじめや転校、慢性疾患のようにその人その人でさまざまな原因が考えられますが、人生の節目に特に現れやすい疾患といわれています。

適応障害の症状

適応障害の症状は、ストレスに対する正常な感情的反応(ストレス反応)の延長線上にあります。つまり健康な方が体験するストレス反応との違いは重症度なのです。症状はストレスを受けた状況や本人の性格にも影響されるので様々ですが、主に以下の4つの状態に大別されます。これらの何れかが目立った状態、またはいくつかが混合した状態となって現われます。

  ○不安症状を中心とする状態
   不安、怒り、恐怖感、焦燥感などと、それに伴う動悸、吐き気、発汗などの身体症状
  ○うつ症状を中心とする状態
     憂うつ、喪失感、絶望感、涙もろさなど
  ○問題行動を中心とする状態
   勤務怠慢、過剰飲酒、ケンカ、無謀な運転などの年齢や社会的役割に不相応な行動 
  ○身体症状を中心とする状態
   頭痛、めまい、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状、腹痛など

ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると症状が改善することが多くみられますが、ストレス因から離れられない、取り除けない状況では、症状が慢性化することもあります。

適応障害とうつ病の違いは

【適応障害とうつ病】
適応障害ではストレス因から離れると症状が改善することが多くみられますが、うつ病となるとそうはいかないことがあります。環境が変わっても気分は晴れず、持続的に憂うつ気分は続き何も楽しめなくなります。これが適応障害とうつ病の違いです。持続的な憂うつ気分、興味・関心の喪失や食欲が低下したり、不眠などが2週間以上続く場合はうつ病と診断される可能性が高いでしょう。

【適応障害と新型(現代型)うつ病】
「ストレス因から離れると症状が改善する」ことから”新型(現代型)うつ病”と同じ?といわれることがあります。適応障害とは異なる新型うつ病の特徴として次の3点が挙げられます。
 ・疾病として定義が定まっていないマスコミ用語
 ・精神的に未だ成熟していない若年層に対して使われる
 ・自分がうまくいかないのは周りが悪い、という他責傾向

適応障害の治療

@ ストレス因の除去
ストレス因の除去とは、環境調整することです。たとえば暴力をふるう恋人から離れるために、ほかの人に助けを求めるなどがこれにあたるでしょう。ストレス因が取り除ける、あるいは回避できるものであればいいのですが、家族のように動かせないもの、離れるのが難しいものもあります。こうなるとストレス因の除去だけではうまくいきませんので、次のステップも必要となります。

A 本人の適応力を高める
ストレスをストレスと感じる人とそうでない人もいるように、ストレス耐性は人それぞれ異なります。つまり、「ストレス因に対しての本人の適応力を高める」方法です。ストレス因に対して本人はどのように受け止めているかを考えていくと、その人の受け止め方にパターンがあることが多くみられます。このパターンに対してアプローチしていくのが認知行動療法と呼ばれるカウンセリング方法です。また現在抱えている問題と症状自体に焦点を当てて協同的に解決方法を見出していく問題解決療法もあります。
この認知行動療法も問題解決療法も、治療者と治療を受ける人が協同して行っていくものですが、基本的には治療を受ける人自身が主体的に取り組むことが大切です。

B 情緒面や行動面への介入
情緒面や行動面での症状に対しては、薬物療法という方法もあります。不安や不眠などに対してはうつ状態に対して抗うつ薬を使うこともあります。ただし適応障害の薬物療法は「症状に対して薬を使う」という対症療法になります。根本的な治療ではありません。つまり適応障害の治療は薬物療法だけではうまくいかないことが多いため、環境調整やカウンセリングが重要になっています。


適応障害は早期に適切な対処および治療を受ければ、多くの患者様は回復すると考えられています。しかしながら、適応障害が遷延化してしまったり、適応障害からうつ病、アルコール依存症、反社会性人格障害などの他の精神障害に発展してしまうこともありますので、心療内科や精神科の専門医を受診されることをおすすめいたします
また、適応障害は嫌なこと以外では活動的な面もあるため周囲からは甘えや怠けとみられてしまいますが、症状の改善には周囲の人の理解も必要になります。


参考サイト : 『厚生労働省 みんなのメンタルヘルス』『人形町メンタルクリニック』 ほか



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